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連載第63回
ついに買ってしまった。別に嫌いなわけでも無く、特に敬遠していたわけでも無いのだが、何となく買いそびれていたのである。いや、それまでに1本も買わなかったわけでもないのだから、話がややこしい。つまり一本が二千円くらいの、タンザニア産の廉価版は持っていたことがあるのだ。それは、材料の下級さをサンドブラストと煙燻で巧く処理してあり、僕のような不調法者でも気にせず汚い手で触れられるところも良かった(元々白い海泡石が、喫うにつれて色が変化するのだ)。
なにしろ、高級で真新しいミアシャウム(つまり海泡石。英語ではセピオライトと言う)のパイプなど、僕には全く縁の無い貴婦人のような存在と、これと言っても良い。僕が持つと美女と野獣コムビのようなものである。
ところが或る日、カミさんの付き添いでトルコに行くことになったのだ。トルコと言えば、ミアシャウムの名産地ではないか。日本で買えばけっこうな値段のする「高級な」ミアシャウムパイプだって、物価の差と原産地値段とでかなり廉く手に入るに違いないと思った。
そんな邪なる心を抱いて行ったのが大間違い。最初のうちは全然見当たらない。トルコならば何処に行っても沢山あると思っていたのに、やや焦りを感じながら歩いたあげく、カッパドキアで石細工の名品を作っているお店で、ついに目当ての物に出会った。しかし、たいそうな彫り物を施された「高級品」は絶対に飽きるのが判っている。
で、選んだのは何でもないハーフベント。純白のボディが色づいてゆくのが楽しみだ。
ILLUST
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