Goods Press Back Number
My Own Toy Box
連載第68回
僕は楽器の演奏を何も出来ない。唯、音を出すだけならば出来る物もあるけれども、メロディなど何をか言わん哉という場合が殆どである。しかし好きな楽器は幾つかあって、チェロなんかいつか手に入れたいと願っている。
小学生から中学生の頃、僕達は縦笛を教材として買わされ、音楽の時間に習ったし、運動会の行進でも皆で吹いたものだった。この縦笛は教材用のリコーダーで、音楽隊の使うリコーダーには色んな音程の物があり、優れた楽器は演奏家しだいでとても良い音色を出すことを知ったのは、ずっとあとになってのことであった。そんな教材の縦笛と同じく、横笛も楽器店で売られていて、ちょっと吹かせてもらったことがあるのだが、やっと音が出る程度にしか扱えず諦めてしまった。
高校生のときに、何故か仲間内でフルートが流行ったことがあり、数人がフルートを始めた。ちょっと借りて音を出してみると、前記の横笛と違い、簡単に「音」は出る。よせば良いのに、調子に乗って吹いていると、持ち主に「中山にはフルートは向かんな」と言われてしまった。僕は上の前歯が出ているので、フルートを吹くと余分な息が漏れてハスキィな音になってしまうそうだ。
以来、横笛系への挑戦はすっかり諦めた。けれども、13年ほど前にドイツへ行ったとき。田舎の楽器店で見つけた「横笛」のディザインに一目惚れして、名前も聞かずについ買ってしまったのだ。高級品ではないが、観光土産用でもない。しかし、こいつは音を出すだけでもけっこう困難で、失敗だったのはその教本を買わなかったことである。
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