Goods Press Back Number
My Own Toy Box
連載第71回
日本人の食卓に欠かせない物のひとつに、箸がある。箸は極めて便利な、これは食器である。そのことは大方の日本人ならば、納得していただけると思う。
で、今回は「箸」のことではなく、箸置である。箸休めとか、箸台とも呼ばれる。僕の場合、食事中に手から箸を離すことは殆どない(なにしろ、口が卑しいというか、食い物に意地汚いというか、酒を飲まない分ひたすら食ってしまう)から、箸置の必要性などそうは無いのに何故か好きなのだ。
かといって、片っ端から箸置を買って集める趣味もない。最初に興味を持ったのは、故郷の町でふと見かけて購入した一品であった。それは、備前焼の大山椒魚の箸置で、小さなサイズながらすごくリアルに出来ていたのだ。

店の人の話だと、何とか言う賞を取った、備前焼では新進気鋭の陶芸作家の作らしい。作った人の名前も聞いたような気はするのだが、忘れてしまった。兎に角、その山椒魚がすっかり気に入ってしまった僕は、帰郷の度にその店を覗く習慣になった。しかしその後、その一品物の山椒魚ほどオーラを放つ箸置には、ついぞお目にかからない。
ところが、である。実にほのぼのとした愛くるしい箸置を見つけてしまったのだ。それがこの蛙で、工房で何人かで作っているらしく、一個一個が微妙に違う表情をしている。備前焼であるから表面の仕上がりも、同じ物は無い。
雨の日に車道を歩いている蝦蟇や、段ボール箱の中で泣いている捨て猫と同じく、放っておけない気持ちにさせられたのは、僕だけか。

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